私には9cmのピンヒールが必要だった

ナチヘラリズム

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自分が自分のまま生きたら、

社会が私を淘汰するでしょ?

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「変わってるね。(苦笑)」

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と言われるたびに細胞に小さな鳥肌が立った。同時に、喉から侵入した見えない手によって、腹の中の臓物が掴まれる。ザワザワと心臓の上を何かが走る。その言葉の裏に込められた嘲笑を感じ取り、全身に得体の知れない小さな罪悪感が流れた。

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変わっていない。普通の自分を演じないと、大多数の人に受け入れられない。そう知ったのは、大学卒業後、社会人になった頃だった。「人が私を不思議な目でみる。」

同期に何度も聞いた。

「ねぇ、私って変わってるの?変なの。」

「みんなどこかしら変?じゃあ普通って何。私は、何をどうしたらいいの」

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私に天性の才能があって、音楽とか、芸術とか、そういう世界で、生きていける確信があれば、生きたいように、表現したいように、誰に嫌われても私は私の道を行くとできたかもしれない。社会性も何もかも関係なく、アーティスティックに生きられるなら、そういう道に喜んで進んでいた。妹のように。

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でも、私にはそんな突出した才能はなかった。

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中高生の頃から、小説を書いていた。曲だって作ってた。けれど、ありきたりなものばかりで、”これじゃない”という現実に、自分で気付いていた。喜怒哀楽が渦巻く、綺麗でドロドロした感情を私はもっていたけれど、それを言語化したり、音に乗せた途端、あまりにも陳腐な灰色の石ころが机に転がるだけだった。

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ゼロから1を生み出す才能は、私にはない。

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もし、そういった才能がないのであれば、

いい大学に行って、いい企業に勤めないといけなかった。この下界で生きていくためには。

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なんとか、社会的に許容範囲の軌道に乗れたはずなのに、この社会では、私は私のままでは生きていけないようだった。

そんな、現実を痛いほど突きつけられた。

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「会社やクライアントから評価を受ける時」「男性から評価を受ける時」

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色々な部署の人にあの子変だねと言われているのも、素敵なだなと思った”普通の”男性が私と真逆の容姿をした”普通”の女性に惹かれることも知った。それを歯牙にもかけず、私は私と、尖ったまま生きて行く勇気もなかった。

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赤リップも、黒髪ボブも、30個以上開いたピアスも、タトューも、真っ黒なワンピースも、この強すぎる感受性も、え?と言われる価値観も、全部捨てて、港区にいるような誰にでも愛される女の子にならなきゃいけないんだと、それしか”普通に”幸せになれる道がない。

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軽蔑すらしていたマルイに入ってるブランドのワンピースを着て、誰からにも受け入れられる女の子になる。

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「個性」というものを、殴り捨てて、なかったものにして、必死に「変」を直した。

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飲みすぎて、いま。頭がとても痛い。

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世間受けする今の自分を、奥歯をぎゅっと、噛んで、創り上げたの。

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それは、私にとって最適解ではなかったし、私が私のまま生きれないことは、物凄く苦しいことだったけど。

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職業としての社会性を手に入れて、世間一般の裕福な生活を送るためには、普通になって、普通の会社に勤めて、違和感を抱きながらも規範やルールに従って、常識のある普通の人と結婚して、普通の人に、なることが、私が幸せになれる道だった。

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そして、いつしか私は、

今の自分を手に入れた。

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あまりにも自然なくらいに、私が好かれたい人に好かれ、今までは見れなかった地上のダイヤモンドを見下ろすような世界に足を踏み入れ、かつての私は忘却の彼方へ沈められた。

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それなのに。

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それなのに。

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自分の生きたいままを生きることを選んだ

素朴な貴方は私には言った。

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「君に初めて会った時、すごく嫌な感じな人だと思った」

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「港区にいそうな、何も考えてなさそうな、浅はかな女性だと思った」

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貴方に映った私の姿は、

私が、ならなきゃいけなくて、なりたくて仕方がなくて、やっとなれた、私が理想としたそのものの姿だった。

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