
頭の中は常に張り詰めている。
あの原稿を書いて、著者に連絡して、メールも返さなきゃな、ゲラ出てきたらタイトルつけなきゃ….。
意識は仕事に塗れ、埋め尽くされる。
寝てる間の夢でさえ。
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出社してデクスにつく。
次から次へと原稿がまわってくる。
それだけ。
それだけ。
それだけに頭が支配されれば私は。
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深夜0時過ぎ、会社を出る。
終電に飛び乗って
資料が沢山入る、紺の鞄を開く。
1年前、彼がプレゼントしてくれた鞄。
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ゲラを出して、読み進める。
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めまぐるしい。なにもかも、
やらなきゃいけないことも、このゲラの誤字を見つけることも、全部、ミスすれば私の責任。
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いつも何かと戦って、ピリピリとしている。
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自分を否定されればそれを受け入れるのが怖くて反論して、誰かを責めてはその虚無感に包まれて、私は。私は。
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4つ、5つと駅を過ぎて、
乗り換えの駅に着いた。
「電車を降りて、階段を上って、人にぶつならないように。」
「千代田線に乗るには右へ曲がらなきゃ。」
意識が、仕事から「現実」に戻る瞬間。
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その瞬間、ツーーーーーーっと気配がした。
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驚いてその気配のもとに指を伸ばすと、
水滴がゆっくり、皮膚を伝って落ちていく所だった。
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私は、泣いていた。
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なぜだか、わからない。
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なにも悲しいこともない、苦しいこともない。
それなのに、
私の体は、私を置いてきぼりにして、
勝手に涙を流す。
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どうして。
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涙が、溜まっては、耐えきれずに落ちて、
とまらない。
とまらない。
ごめんなさい。
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現実に引き戻される、乗り換え駅。
仕事の忙しさにかまかけて、
無理矢理に堰き止めてた自分の心が、
崩れて溢れて出て、本当は知ってる。
悲しみを抱えていること。
でもそれを認めたら動けなくなる。
だから啜り声もあげない。鼻だって啜らない。
奥歯でぐっと噛みして、涙を拭いて、
乗り換えの電車に乗り込む時には
もういつもの私に戻ってる。
たたかうわたし。
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私、頑張ってるんだ。
ひとりでも自分を支えてるの。
脆さは上手く隠してるし、毎日闘えてる。
凛と強く生きれてる。
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そうだよね?
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いままでは、
疲れた体で帰宅するときの一瞬の楽しみが
乗り換えの間、電話で貴方の声を聞くことだったのを、
思い出してしまったよ。


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